日日是好日
『日日是好日』を観ました。
樹木希林さんの、邦画では最後の作品となってしまった映画ですね。
茶道を通して、人生に苦悩しながらも成長していく、ひとりの女性を描いています。
「雨の音を聞く」シーンが出てきますが、
雨のように淡々と、流れるように静かで、
そして雨が地面に染み込むように、心に深く染み込んでゆく、
この映画そのもののように感じました。
茶道の繊細さ、奥深さを紹介するシーンがたくさんありますが、
驚いたのは、樹木希林さんの所作の美しさ。
長年の経験がおありなのかと思うほど、凛とした深みのある美しさを感じる所作でした。
実際には茶道のご経験はなかったそうなのですが、作法は別としても、座っている姿も手の動きも、惹きつけるものがありました。
茶道を続けている友達に、この話をしたら、
もちろん作法は大事なのだけれど、それよりも、どの瞬間も「ここ」にいることが大事で、それができている人の所作は美しいの。きっと樹木希林さんはそういう人だと思うから、所作も美しいと感じるんだと思う。
と教えてくれました。
亡くなられてから、その言葉や人生観が多くメディアで取り上げられた樹木希林さん。
破天荒な生き方も、歯に衣着せぬ発言も、ともすれば変人扱いに取り沙汰されてしまうのに、
この方にはそれを感じることなく、むしろこちらの背筋がスッと伸びるような、心地よい緊張感や清々しい美しさを感じていたのは、あの所作のように、いつの瞬間も真剣に「本物の自分」を生きていらしたからなのかしら。
美しい女優さんが何人も登場しましたが、所作で人を釘付けにする樹木希林さんは、圧倒的な存在感であり、私はそこに類を見ない孤高の美しさを感じました。
所作には、その人の生き様があらわれますね。
『雨の日は雨を聞く。雪の日は雪を見て、夏には夏の暑さを、冬は身の切れるような寒さを。五感を使って、全身で、その瞬間を味わう。』(映画のセリフから)
一期一会の尊さも、この映画を観て、あらためて感じたことです。
会いたい人には会っておこう。
今という時間は二度とないから、この瞬間を大切にしよう。
何度気づいても、すぐに忘れてしまうのだけど。
この映画を観てから、今回両親と過ごせたのは、とてもありがたいことでした。
この映画を観て、茶道を始める人がきっと増えますね(笑)
でも、茶道に興味がなくても、魅了される美しい映画です。